窓辺を背にして彼は続ける。

「また空振りの可能性もある。金髪野郎が本当にいたとして、あいつが大ボラ吹きの可能性もある」

 ――そうだ。
 自分の歌で、もしかしたら帰れたかもしれないことを、まだ彼に伝えていない。

「わ、わかってるよ。大丈夫」

 伝えたほうがいいだろうか。伝えたら、彼はどうするだろうか。

「ま、帰れなかったとしても、海賊の嫁になればいいしな」

 またそんなことを言われて、つい、カチンと来てしまった。

「だからそれはありえないから! 私はグリスノートのことはなんとも思ってないし、好きでもない人のお嫁さんになんてならないよ!」

 ――まずい。
 怒りの感情とともに、また、あの台詞が耳によみがえった。

「それに、私の居場所はこの世界にはないから」

 声が、カッコ悪く震えてしまった。