「見たとおりだ」
ラグさんが素っ気なく答えると、兄貴の眉がぴくりと跳ねた。
「なんで黙ってた」
「貴様が銀のセイレーンを殺したいほど憎んでいると知って、言えるわけがないだろう」
答えたのはセリーンさんだ。兄貴が悔しそうに奥歯を噛む。
そうだ、兄貴は銀のセイレーンを憎んでいると確か前に言っていた。まさかお嫁さんにしようとしていた相手がその憎むべき相手だったなんて。
(でも、やっぱりカノンがあの銀のセイレーンだなんて信じられない……)
ついさっきまで傍にいたカノンの優しい笑顔が目に浮かんだ。
「とにかく、カノンは無事な可能性が高いんだな」
セリーンさんに訊かれ、私は強く頷く。
「多分。ううん、絶対!」
アヴェイラは絶対にカノンを傷つけたりしない。
イディルで共に過ごした数年間があるからこそ、そう言い切れる自信があった。



