兄貴が首を横に振る。

「わからねぇ。……だがアヴェイラの奴、俺に女が出来たと知って悔しかったのかもしれねぇ。あいつ、俺のことを理解できる女がいるわけねーってずっと言ってやがったからな」

 ――は?
 思わずぽかんと口が開いてしまった。

「あいつ、まさかカノンを」
「んなわけないでしょ!? この鈍感馬鹿兄貴!!」
「あぁ!?」

 流石に我慢できなくて怒鳴ると、兄貴がこちらを柄悪く睨んできた。

「アヴェイラはカノンを傷つけたりしないわ。そんなことが出来る子じゃないって兄貴だって知ってるでしょ!」
「ならなんで攫ったりしたんだよ!」
「そんなの私だって聞きたいわよ!」
「銀のセイレーンの力が欲しくなったとかっスかね?」

 そう冷静に言ったのはコードだ。
 兄貴がそれを聞いて思い出したようにラグさんを睨みつけた。

「カノンが、本当にあの銀のセイレーンなのかよ」