甲板に出ていた海賊たちが皆各々の武器を手にし、その場の空気が一気に張り詰める。
「片方はグリスノートです!」
「ラグさんだ! ラグさんですよ、カノンさん!」
見張りの声に続いてフィルくんが上ずった声をあげる。でも私は答えることが出来なかった。
まさか飛んでくるなんて思わなかった。だって、こちらに着いたら彼はあんなに嫌がっている少年の姿になってしまうのに。
徐々にはっきりと見えてきた彼の姿に、また胸が騒ぎだす。
と、アヴェイラが落ち着いた様子で私たちのすぐ目の前までやってきた。
「さぁ、いよいよだ。人質らしく頼むよ、カノン」
「う、うん」
彼女は片目を瞑るとくるり背を向け、その場に仁王立ちになって空を見据えた。



