私も彼女のその堂々とした後ろ姿を見つめて。
(……え? それだけ、だよね?)
なんだかこちらまで急に不安になってきてしまった。
私はただグリスノートの前で歌いたいとしか聞いていない。だから歌を教えてくれと。
アヴェイラの想いが少しでも彼に届けばと、喜んで教えたけれど。
――もし、彼女にそれ以外の思惑があったとしたら。
そのとき視界に光が差した。水平線から朝日が昇ってきたのだ。その眩しさに目を細めていると、アヴェイラの凛とした声が響いた。
「お前たち、旗を揚げな!」
「アイアイサー!」
海賊たちが威勢よく答え、空の色に映えるあのピンクの旗が高く上がっていく。
(私、アヴェイラに歌、教えて良かったんだよね?)
彼女の長い髪が旗と一緒に大きく揺れていた。



