――カノンにこれ以上近づくな?
「いやいや、そういう意味じゃないって」
ゆっくりとベッドの方へと戻りながら、ひとり首を振る。
……あのとき、ラグはグリスノートのいる甲板に上がっていった。その後の会話をきっとフィルくんは聞いたのだろうけれど。
テーブルにトレーを置いて、ストンと椅子に腰かける。
彼のことだから、フィルくんが思っているような深い意味はないとわかっている。
これ以上近づいて私が銀のセイレーンだとグリスノートにバレてしまうとマズイから。結局バレてしまったけれど……多分、そういう意味だろう。
(わかってるのに……どうしよう)
熱いほどに火照った頬を私は両手で覆う。
――嬉しい。
そう思ってしまった。



