(でも、やけにリアルだったなぁ)

 3年ぶりに見た幼馴染は少し大人になっていた。背も随分伸びていたように思う。
 それに彼がいたあの部屋。今の彼の部屋など知るはずがないのに。

 ……もしかして、あれは夢や幻などではなく現実で、一時的にあちらの世界に戻れたのでは。

 そう考えた方が納得がいくほどにリアルだった。
 ざわりと、胸が音を立てる。

(……もし、)

 もし本当にあの歌の力で戻れたのだとしたら。
 私は自分の両手を見つめる。
 あのとき、伸ばされたあの手を掴んでいたら……。

(今、もう一度あの歌を歌ったら、どうなるんだろう)

 どくどくと胸の音が大きくなる。
 口を開いて、小さく息を吸って、あのメロディーをもう一度口ずさもうとして。
 ふいに浮かんだのは、彼の不機嫌な顔だった。

「歌えないよ……」

 口から出たのは歌声ではなく、そんな呟きだった。