ん?


「…あ」


やばい、やばい!!!
地味子の姿で来てない!!やらかした…。

そうだよね、学校じゃなくても会う確率はあるよね。アメの時だって翔と遭遇してるし。

考えてなかった…いや、もうこれは熱のせい。そう思い込もう。


でも口封じするしか…。


「矢田君…っ」


「菅野さん本当に大丈夫?体調悪いんじゃない?」


「…矢田君の言う通り、実は体調が悪くて…。薬とか買いに出たはいいんだけど、やっぱり無理だった」


「無理しちゃダメだよ、ちょっとごめんね?」


「へ?」

矢田君は私のおでこに手を当てた。

なるほど。


「あつっ、この熱でよく買い物行こうと思ったよね」


…まあね。


「お母さんは出張でいないし、頼める人もいなかったから…」


「僕がいるじゃん」


「ついさっき思い出して、電話かけようと思ったら、スマホを家に忘れてね」


「ついさっき思い出されたのは傷ついたけど、頼ろうとしてくれたのは嬉しいよ。それより、菅野さん立てる?歩けそう?」


「いや、ちょっと休憩してから家に帰ろうと思って」


「動くのは無理か、薬とかは?」


「家に帰ってからタクシー呼んで買い物に行こうと思ってる」


「じゃあ、僕が買ってくるよ」


「え、いいの?」


「うん、任せて」


矢田君、優しい。



「だから菅野さんは…」


「そこの可愛子ちゃんとイケメン君」

矢田君の声が誰かによって遮られた。