「…矢田君」

「うん?」


「私達、友達だよね」


「僕はそう思ってるよ?」


「良かった。この学校でボッチはきついからさ」


「ははっ、龍神とも関わっちゃったしね」


「そう、私の中で龍神の存在が想定外過ぎて、学校生活が狂ったよ」


「でも、退屈はしなかったでしょ?」


矢田君の一言に、私は立ち止まった。


「それは、そうかもしれないかも…。私、龍神を抜けられて嬉しいはずなの。嬉しいはずなのにっ」


何故か涙が出る。




ギュッ


「っ!?」

矢田君はそっと抱きしめてくれた。




「本当は、嬉しかったのっ。“本当”の私が認められたんだって。
でも違った、認められてなんていなかったっ。私は…やっぱり1人なんだなって思っちゃったよぉ」



「菅野さん、大丈夫。僕もその1人だけど菅野さんには沢山の味方がいるはずだよ。1人なんかじゃない。1番やっちゃ事は自分を粗末にする事だよ。まぁ、そんな事したら僕が怒るから」



「確かに、私には矢田君や家族、沢山の味方がいる。ありがとう、気付かさせくれて。
ちょっと気持ちが楽になった」


「どういたしまして」



「私の家、ここなんだ。送ってくれてありがとう」



「うん、朝も菅野さんの家寄ってくから、先に行かないでね」


「ありがとう、でも無理しないでね」


「実は通り道なんだよねここ」


「あ、そうなんだ」



響希もだけど、矢田君も通り道なのか。ここまで来ると、本当なのか疑っちゃいそうかも…。

でも、嬉しい。



「じゃあ、また明日」


「うん」


小さく手を振って矢田君を見送った。
矢田君、本当にいい人だな。そう思うのは何度目だろ。