「もしかして、言い合いになったのは、弱いとか言われたからとか?」


酔っ払いだったら言いそうだし。



「まぁ、あってるね。
“俺に負けてる様じゃ、俺の弟子の方がお前らより強いな。お前らみたいな軟弱者のお子ちゃまは、龍神にはいらないでちゅよ〜”
なんて言われたら、いくら酔っ払いに言われたとしても、キレるよね」



確かに、そんなこと言われたら私もキレるね。
響希達の反応は間違ってないと思う。



「え、でも…和解ってどうやってしたの?」



「…何と言うか、可哀想になっちゃって何事も無かった事にしたんだよね」



可哀想?



「どういう事?」



「言い合いになってる時に、急に女の人が倉庫に入ってきて、先代を見つけるなり顔面ボコボコにして、先代を引きづりながら一緒に帰って行ったんだよね…」


皆苦笑いしてる。


「…その女の人って誰だったの?」



「その先代の奥さんだったみたいで、
“主人がお世話になりました!!また後日、ちゃんと挨拶に行かせますのでよろしくお願いします!!ほらあなた、すみませんでしたって言いなさい!!!”
ってね。その先代は素早く、
“すみませんでした”
って床におでこをくっつけて謝ってきたよ。僕達は何が何だか分からなくて、あんぐりと口が開いてたね」


「その奥さん、凄いね」

先代を顔面ボコボコにしたんでしょ?
奥さんの方が強いじゃん…。



「それで次の日、顔面ボコボコの状態で挨拶をしに来たから驚いたんだよね。
本人は飲みすぎて、家の玄関の前で寝てて、顔は帰る途中に転びまくったのかなって言ってたし」


お、奥さん…旦那を外で寝かせたのか…。自業自得ってか。

でも、本当に全く記憶にないんだね…。凄いわ…。


「なるほど、だから何事も無かったかの様に響希達も初めましてって事にしたのね」


「「そう…」」



「で、その先代が今日来ると…」


「「…」」


その不安そうな顔は、また何かありそうな気がするからかな?