わがままな女神たち

「なんだか申し訳なかったわね」

やはり、徹に呼び出された弘道は忙しい時間を縫って駆けつけてくれたらしい。

「よく言うよ。俺が浮気しているって信じ込んでいたお前に、いくら説明したって納得しなかっただろう?」

「まあ、それは」
そうだと思うけれど。

「結局、俺を信じてなかったわけだ」

「ええ、違うでしょ?」

「どこが?」

「だって、徹が最初から説明していてくれれば、こんな誤解を生むこともなかったのよ」

普段からちゃんと言ってくれない徹にも問題があると思う。
口をとがらせ文句を言った乃恵に、徹が顔を寄せる。

ちょ、ちょっと、近い。

「じゃあ聞くが、俺が事前に開院の準備をするって言えば乃恵はどうした?」

「そりゃあ・・・止めたと思ぅ」
最後の方は声が小さくなった。

「だろ、俺の金で開院準備をするなんて言えば、全力で抵抗しそうだもんな」

うん。
間違いなく阻止します。


「だから黙っていたんだ。これは俺なりに考えた結果だ。乃恵のためには違いないが、俺が愛する妻との生活を考えて最善策を選択したらこうなっただけ。だから、これは俺のためにやったことだ」

「とお、る」
鼻の奧がツーンッとして、声が詰まった。

「バカだな、こんなことで泣くな」

そっと、徹が乃恵を抱きしめる。

「泣いてないもん」

「じゃあ、これは汗か?」

乃恵の頬を伝った滴を徹の指がなぞる。

「・・・意地悪」

ここしばらくの心配事は、乃恵の取り越し苦労に終わった。
徹は乃恵を愛してくれていて、女の影もなかった。
完全に乃恵の暴走。
結末を知ってしまえば、恥ずかしさしか残らない。