わがままな女神たち

「驚かせたよな」

「うん」
驚きすぎて言葉が出てこない。

「でも、今すぐのつもりではないんだ。研修医の期間が終わって少し落ち着いたら考えてくれればいい。ここは条件もいいし、気に入らなければすぐに手放せばいい。無理強いするつもりはないから」

「徹」

正直、この先に不安を感じていた。
研修医が終わっても今の病院に残りたいかと聞かれれば違う気がするし、大学病院に戻ってバリバリ働くのも体力的に自信がない。
じゃあと考えると、今よりももっと小さくて患者さんを近くで診られるところ。クリニックのような所に行けないかと思っていたところだった。
さすがに開業は考えていなかったけれど・・・

「山神先生の協力で大学病院との提携もとれそうだし、今まで通り週に何日か大学病院へ勤務して手術に入るってこともできるらしい」
「へえー」

そんなことまで調べてくれたんだ。
確かに、小さなクリニックで働きたいけれど、手術にも入りたいし、色々な症例だって経験したい。
そんな私にとって徹の提案はベストなもの。
でも、

「ものすごいお金がかかるのよ」

もちろんこのビルのワンフロアを借りるのだってものすごいお金。でも開業となればそれ以上のお金がかかる。何しろ医療機器はバカみたいに高いんだから。
だからみんなある程度勤務医をしてスキルを積んで、お金を貯めてから開業する。

「大丈夫。こう見えて蓄えはある」
「でも」

「いいから好きにさせてあげなさい。あの淡白な徹がここまでするのはよっぽどなんだから」
弘道が楽しそうに言ってくれる。

「お前はうるさい。もういいから帰れよ」
「ハイハイ。徹の浮気疑惑を払拭したところで、邪魔者は帰りますよ。じゃあね」

弘道は荷物を片づけて出て行った。