わがままな女神たち

「どうしたの?私に見とれちゃった?」

女性はにっこりと笑いながら近づいてくる。

その瞬間、

あぁ。
乃恵は声が出そうになった。

この匂い。
これは、徹に付いていた香水の匂い。

そうか、この人が・・・

きっとこの時、乃恵の目つきが変わった。

ここにいたくない。
帰りたい、逃出したい。
何も聞きたくない。

「乃恵?」

徹の声が聞こえて頭を上げると、

「初めまして、杉本ヒロミです」
目の前に女性の手があった。

これって、握手だよね。
でも、イヤだ。

杉本ヒロミさん。
年は・・・徹と同じくらいかな。
目は大きな二重で、鼻筋は通っていて、唇はプックリとして存在感がある。
とにかくパーツの全てが整っていて、美人さん。
でも・・・

「オイお前、変な挨拶をするんじゃない」

ペシッと、徹がヒロミさんの頭をはたいた。

嘘。
徹に限って女性に手を上げるなんて、ありえない。
それに・・・
何だろう、この違和感。

「恵・・乃恵」

ん、ん?
いけない自分の世界に入っていた。

「長谷川乃恵です」
差し出された手は無視して、ただ会釈をした乃恵に、
「オイッ」
徹の突っ込みが入る。

「あ、ああ、香山乃恵です。職場では旧姓のままなもので、つい、すみません」
頭を下げた。

フフフ。
聞こえてきたヒロミの笑い声。

なんだか凄く気分が悪い。