わがままな女神たち

乗り慣れたはずの徹の車。
乃恵は助手席に座り、徹は運転席から前を見ている。

これといった会話もないまま車は走り続けた。

普段から口数が多いわけではない徹。
乃恵だっておしゃべりではないから、2人で過ごす無言の時間も不快ではない。
むしろ心安らぐと今までは感じていた。
でも、今夜だけはこの沈黙が辛い。

結婚式もあげず身内だけの食事会をして入籍を済ませた乃恵と徹。
2人とも不規則な時間で働いているせいもあり、住む所だけは利便のいいところにと都心のマンションを買った。

今日はたまたま大学病院での勤務だったけれど、普段はマンションから病院まで駅2つ、こうして徹の車で帰る事は珍しい。

「眠かったら寝てていいぞ」
「うん」

少しお酒が入ったせいか眠さはある。
それでも、今は寝られない。

「着いたら起こしてやるから」

そう言われても・・・

流れる車窓に目をやりながら、乃恵は窓に映る徹の横顔を眺めていた。