一華も麗子も無事に仲直りできたみたいで、その後は5人でテーブルを囲んだ。

「一華がわがままで申し訳ないな」
兄として孝太郎が鷹文に謝っている。

「いえ、俺の度量が狭いせいだと思います。すみません」
鷹文も頭を下げる。

なんだかんだ言って、麗子も一華も愛されている。
お互いに不器用ですれ違いはあるにしても、素敵なカップルに違いない。

いいなあ、みんな幸せそう。
ただ1人人ごとみたいに見ていた乃恵だけが冷静でいられた。

「乃恵ちゃんも、ちゃんと話をした方がいいわね」

いつの間にか食事の手が止まってしまった乃恵に、麗子が囁く。

いくら話をしたって、何も変わらないと思う。
あの香水の女がいる限り、私達は終わりなんだ。
イヤ違う。香水の女がいるからうまくいかないわけじゃない。
徹の気持ちが、

「乃恵ちゃん、ちょっと持っていてくれる」

ポケットから携帯をとりだした孝太郎が、並々とワインの注がれたグラスを乃恵に渡した。

「え、ええ」

目の前のテーブルにもグラスを置くくらいのスペースはある。
なぜ渡されたんだろうと首をかしげる乃恵。

カシャッ。
小さなシャッター音がした。

「孝太郎さん?」
おそらく写真を撮られたんだろうと、乃恵は抗議の声を上げる。

「大丈夫、悪用しないから。ありがとう。ほら、食べて」
グラスを奪い返すと、何もなかったように鷹文との会話を再開させた。