わがままな女神たち

ムギュッ。
もう片方の頬にも鷹文の手が伸びてきた。

「い、痛いって」
半分キレ気味に振り払おうとするけれど、やはり逃げられない。

「バカなことを言うんじゃない。俺の愛する奥さんは一華だけだよ」
「じゃあ何で」
何も言ってくれないの?

「俺と一緒にならなかったら一華はもっと自由に生きられた。仕事だって続けられただろ。俺は、一華から自由を奪ってしまった責任をずっと感じていた。だから、何も言えなかったんだ」
「鷹文」

「でも、お兄さんに言われた。一華に遠慮して何も言えなくなったら夫婦としてダメになる。夫婦は共に暮らしていく存在だから、お互いを見つめるんじゃなくて2人で同じ物を見て生きなくちゃだめだってね」
「へえー、お兄ちゃんが」
良いこと言うじゃない。

「もう一華に遠慮はしない。何でも言う。たとえそれで喧嘩になっても、浅井の家を出ることになってもかまわない」
「そんな、おおげさな」

「お兄さんが、『いざとなったなら2人とも鈴森商事で使ってやるから安心しろ』って」

フフフ。
絶対にないことだけれど、そう言ってもらえるだけで気持ちが軽くなる。

「鷹文、ほっぺた痛いから離して」
さすがにもう限界。

「もう2度と行方不明にならないな?」
「うん」
「心配事があればまず俺に話すこと」
「はい」
「よし」

はあー。
やっと手が離された。

「ごめんね鷹文。ずっとあなたの気持ちを疑っていた」
「俺こそ、一華の気持ちに気づかなかった」

真っ赤になった一華の頬を鷹文が包み込む。

「痛かった?」
「うん」

「凄く心配したんだ。もし一華がいなくなったらと思ったら、生きた心地がしなかった」
「ごめん」

「一華、何があっても離さないよ」
「何があっても離れないわ」

そっと唇が重ねられ、鷹文の温もりが流れ込んできた。