ここにいるはずのない人物を見つけ、一華は固まっていた。

「嘘・・・」
小さくささやいた声に、
「一華さん?」
乃恵が反応する。

「大阪から鷹文くんの用意したヘリで一緒に帰ってきたんだ。じゃなければ、こんな時間に戻っては来られない」
不思議そうにする一華に、孝太郎が説明してくれた。

ああ、確かに。
浅井の力があれば、ヘリを飛ばすことも一華の居場所を突き止めることも容易いことだろう。
わかっていたはずなのに、浅井の力の大きさを忘れていた。

「お前のことを心配して鷹文くんは帰ってきたんだ。まずは心配かけてしまったことを謝れ。その上で、思っていることをはっきり伝えてこい。お互いに我慢ばかりしていたって夫婦は続かない。ちゃんと2人で話し合わないとな」

まだ結婚もしていないくせに、偉そうなことを言う孝太郎。
いつもなら文句の一言でも言ってやりたい所だけれど、今日は一華の方が分が悪い。

「ほら、行ってこい」
孝太郎が一華の背中を押す。

一華は立ち上がり、鷹文の元へ駆け出した。