「悪いけれど、はっきりするまで孝太郎に話す気はないの」

「何でですか?」
誰よりも心配している人なのに。

「もしガンだったら、私は孝太郎とは結婚しないつもり。1人で治療して、最後を向かえるわ」

「そんなこと言ったらダメですよ。私がいい医者を紹介します」

「ありがとう、乃恵ちゃん。でも、本気だから。これ以上孝太郎の負担になりたくないの」
うっすらと麗子さんの目に涙がにじんだ。

明るく言っているけれど、悩んだ末の結論なんだ乃恵は感じた。
その気持ちは乃恵にもわかる。
きっと自分でも同じ選択をするだろう。

「もし本当にガンだったら、私が麗子さんの看病をしますよ。どうせ徹には香水の女がいるんですから、家にいる必要もありませんし」

「何言ってるの、私が一緒に暮らすわ。どうせ、鷹文は私になんて興味ないんだから、優華も連れて麗子さんの家に押しかけるから」

一滴のお酒も入ってないくせに、なぜか盛り上がる2人。
半分は麗子を勇気づけるための空元気、もう半分は本気で麗子の家に押しかけるつもりだった。

「ハハハ、3人で暮らすの?楽しそう」

まんざら冗談でもない顔で笑った麗子。
つられたように、乃恵と一華も笑い出した。

その時、