わがままな女神たち

万事休す。
もう収める方法はないのかと思ったそのとき、

「すみませんが、支配人を呼んでください」
一華が立ち上がり、店員に1枚の名刺を差し出した。

「えっと・・・」
困惑したように、名刺と一華を見比べる店員。

「私、浅井の家内です。支配人を呼んでいただけますか?」
穏やかな口調で話す一華に対し、

「は、はい。ただいま」
やっと状況が飲み込めた店員は逃げるように奥へと消えていった。

さすが浅井コンツェルン。影響力は絶大だわ。


数十秒後、現れた男性。

「当店の支配人でございます」
迷うことなく一華に向かって一礼した。

「お騒がせして申し訳ないですけれど、」
言いかけた一華に、

「いえ、こちらこそ申し訳ございません。鷹文様にはいつもお世話になっておりますのに、奥様がいらっしゃっているとは存じませんで、失礼いたしました」
深々と頭を下げる。

「今日は友人と食事に来ただけなので」

「さようでしたか。後は私がお話をいたしますので、奥様には別の席をご用意いたします」
怒って立ち上がったままの男の子はほったらかしで、話を進める支配人。

「オイ、俺たちを無視して話を進めるな」
やっと気づいた男の子が声を上げた。

「失礼ですが、本日はどなたのお名前でご入店ですか?」
「それは・・・親父の・・・」

「ここで騒ぎを起されますと、会員様であるお父様にもご迷惑が掛かりますが?」
よろしいんですかと、尋ねる支配人。

「それは・・・」
男の子はなにも言えなくなってしまった。