わがままな女神たち

結婚して1年半が過ぎた徹と乃恵。
お互い仕事も忙しく、2人で過ごす時間は多くはない。
休みもあわないし、急に仕事が入って予定をキャンセルなんてことも珍しくない。
それでも、時間を見つけて食事に行ったり、借りてきた映画を見たりして楽しく過ごしていた。

「好きな仕事をしている以上時間がないのはしかたがないと諦めていましたし、徹も理解してくれていると思っていたんです」

「違ったの?」
心配そうに、麗子が身を乗り出す。

「2ヶ月ほど前から急に帰りが遅くなって」

「それは、」
仕事が忙しいんでしょ?と言いたそうな一華の顔。

もちろん、乃恵も最初はそう思っていた。
きっと大きな仕事に取りかかっていて、忙しいんだろうと。
でも、

「この2ヶ月、毎日毎日日付が変わってから帰るんです。『忙しいの?』って聞いても『ああ』って答えるだけで、まるで私を避けているみたいで」

「うーん」
困ったなって顔の麗子。

夫婦なんて常に一緒にいる存在な訳で、良いときもあれば悪いときもある。
周りから見れば、気にしすぎぐらいに見えるのかも知れない。
でも、

「徹に来たメールをたまたま見ちゃったんです。『徹って、いつまでたっても子供の頃と変わらないのね』とか、『いつまで秘密にするつもりなの』とか。その差出人が『ヒロミ』さんで、最近では日に何度もメールがきていて」

「そんな、徹に限って」

さすがに、麗子は信じられないって顔をしている。

そうよね、普段の真面目な徹からは想像もできないもの。
乃恵だって、できることなら信じたくはない。