ブブブ、ブブブ。
麗子の携帯の着信。

「ちょっとごめんね」
麗子は一華と乃恵に断ってから電話に出た。

「もしもし。うん。うん。いいえ、行かなかったの。そうじゃなくて、途中でお友達に会って。だから、違うから。はい。はい。しつこいわね。今お友達と一緒だから、切るわよ。はい。はい。じゃあね」
一方的に話を切り上げて電話を切った麗子。

「ごめんね。引き継ぎ中の秘書の子が余計な連絡をしたものだから、孝太郎が心配して」
「いいんです、あのお兄ちゃんにものが言えるのは麗子さんだけですから。うらやましい」

「何言ってるの、一華ちゃんと鷹文くんだって仲がいいじゃない」
「そんなこと・・・」

以前は何でも話せる仲だった。
誰よりも信頼できて、遠慮なく思いをぶつけられた。
でも今は、

「鷹文、凄く優しくなったんです」
ポツリと呟いた一華。

「それのどこが不満なのよ?」
麗子は不思議そうな顔。

「何をしても、言っても怒らないし、私の言うことは何でも聞いてくれるんです」
「いいじゃない」

「そのために無理をすることになっても文句も言わないし。昔は何でも言い合えたのに・・・」
「一華ちゃん」

うっすらと涙ぐんでしまった一華を見て、麗子も言葉を止めた。

「まるで私に興味がないみたい」
そう言った瞬間、一華は泣き崩れてしまった。