病院を出て、ショッピングモールの中を散策中。

「わぁー見て、かわいい」
麗子が棚に並んだ小さなベビー服に手を伸ばした。

綺麗なパステルカラーの中から淡いピンク色の1枚をとり、乃恵に見せる。

「本当に、かわいい」

産科医なんてしていれば生まれたての赤ちゃんは珍しくもないけれど、熊さんやぞうさんの付いたベビー服はちいさくてかわいい。
自分には一生無縁だと思っていても、手にすれば乃恵の口元も緩んでしまう。

「優華ちゃんにプレゼントしてもいいかしら?」
すでに何枚かを手にしている麗子が一華に確認する。

「ありがとうございます。それなら、こっちのにして下さい」

一華が隣の棚から真っ白なベビー服を手にした。

「えぇ、こっちがいいの?かわいくないわよ」

別にかわいくないわけではない。
一華が手にしたものも真っ白で小さなお花のワンポイントが刺繍してあって、素敵ではある。
でも確かに、麗子が手にした方が華やかでとってもかわいい。

「ほら見てください、こっちの縫製は縫い目が中にあるじゃないですか。これだと着たときに縫い目が肌に当たるんです。それに、こっちはコットン素材で、肌にも優しいから」
「へえー」

ウンウンと頷く麗子。

やっぱりお母さんだな。
すでにいくつかのベビー用品を手にしている一華を、乃恵は感心しながら見つめた。