エモいから
という理由で夜の公園で2人、
煙草を吸った。
ダボッとしたシルエットのパーカーと上着、
親指の付け根まで隠し首をすくめる。
「寒いね」「うん」
ピクッと動いた左手に僕は応じた。
君の右手の薬指には指輪がはめられていた。
「その煙草変なにおいがする」
と君が言った。
真っ暗な冬の空に煙草の煙が舞う。
「ガラム。変わったのが好きなんよ」
「やっぱきもいな」
と君が微笑んだ。
「ハマったら美味しいんよこれが。
フィルターめっちゃ甘くて吸い終わったら唇甘くなるんよ」
「えー、吸ってみたい」
「31mgで結構重いよ」
「じゃあ無理だね」
と笑った。
「ほんと甘いんよ」
と君の方をみる。
何もない空を見上げていた。
「そうなんだ」
君が強く手を握った。
街灯に照らされた指輪が光った。
君が先に吸い終り、こっちを向いた。
「長いね」「まぁね」
僕は煙草を持つ手をおろした。
2人の後ろを自転車が通る。
「そういえばこの前好きって言ってたリキュール買ったよ」
僕の家までの道を歩いた。