その日はとても寒かった。
マフラー持ってくれば良かったな〜。
もうすぐで学校に着くというときに、急に寒くなったのだ。
「あーさーひー!」
「うわっ!」
「あさひ、おはよう!」
「あっ、瑠璃ちゃん…おはよ。」
瑠璃ちゃんの格好、とっても暖かそう。
マフラーと手袋して寒さをしのいでる。
いいな…
「あさひ、寒くないの?」
「うん。寒い…」
「だよねー。私も少し寒い…」
私は大げさに体を縮こませてみせた。
「あっ、そういえば…告白について、家で考えてみた?」
あっ、そうだった!
瑠璃ちゃんにきちんと伝えないと。
「うん。実はね、今日手紙で告白することにしたんだ。」
「今日!?」
「うん…」
「早くない?大丈夫?」
「昨日ね、お姉ちゃんに早めに渡した方がいいよって言われて…」
「お姉ちゃん?」
「うん。中2なんだけどね。」
「へぇー。知らなかった!」
「そっか!私がまだ言ってなかったんもんね。」
「うんうん。」
「それでね、お姉ちゃんと告白の仕方について一緒に考えたんだ。手紙にしようって。」
「手紙にしたんだね。確かに、手紙が良いのかも!お姉ちゃんにアドバイスもらえたんだ。良かったね〜。」
瑠璃ちゃんの顔がさっきよりも明るくなった。
瑠璃ちゃんに心配かけなくて済む!
「じゃあ、その手紙は下駄箱に入れといたらどう?」
「そうだね…」
あっ、でも…
「下駄箱はみんなも使うからバレたらやばいかも!」
「確かに…どうする?」
「じゃあ、沢田の机の中に入れとくね!」
「分かった!」
それから二人で学校まで急いで走っていった。
みんな、まだ来てないといいんだけど…
沢田が来ていたらどうしよう…
「あさひー、どうする?何人かもう来てるよ?」
「そんな…どうしよう。」
「明日にする?」
「うーん。じゃあ、放課後入れることにするよ。」
「本当?分かった。じゃあ、またあとでね。」
「うん…」
瑠璃ちゃんの席は、私の席から遠いところにあって、なかなか喋れない。
放課後は、瑠璃ちゃんを待っている暇はないかも。
そしたら…
自分でタイミングを見計らって、手紙を入れるしか方法はない。
絶対に失敗しちゃダメ…

授業が始まってからも、沢田のことが気になってノートはほぼ空白。
心配しちゃダメ!
もっと自分に自信を持たないと…!
ちら。
やっぱり沢田は、いつも通り、真剣にノートをまとめている。
すごい集中力…
そのとき、沢田がこちらを振り返った。
ゴクリ。
沢田は私と目が合った途端、ぱっと目をそらした。
え、今の何…?
沢田の耳は赤くなっている。
もしかして、もしかして…!
私は自分を信じることにした。
きっと大丈夫、大丈夫だよね。

放課後になる時間まで、とてつもなく遅い時間が感じられた。
そしてやっと放課後。
私は瑠璃ちゃんに目配せした後、私たち以外、誰も教室にいないことを確認し、手紙をそっと沢田の机に入れた。
上手くいきますように…
「あさひー、手紙入れた?」
「う、うん。」
「じゃあ、早く帰ろ!」
「うん!」
私たちは走って校内から出た。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…」
久しぶりに走ったから疲れたなー。
「あさひ、もう疲れたの?」
「う、うん。瑠璃ちゃんこそ大丈夫なの?」
「私?全然だよ〜。これくらいじゃ全く。」
瑠璃ちゃんすごい…
それにしても、沢田の手紙を見たときの反応が気になるな〜。
どうなんだろう?
今までの人生の中で一番緊張する…
「あさひ、手紙のことで考えてるの?」
「う、うん…」
「あんまり考えない方がいいよ。今日、眠れなくなっちゃうかもよ?」
「そうだね…」
「もし上手くいかなかったとしても、また次がある!そう思えばいいんじゃない?」
「…」
「あっ、ごめん!私、言い過ぎた。告白の返事、別に私に伝えなくてもいいよ。自分で決めてくれればそれでいいから。ね?」
「…でも」
「いいの、いいの。私は沢田の告白の返事が知りたい訳じゃない。ただ、あさひの力になれればいい。」
「…今までありがとう。」
「急にどうしたの?」
「瑠璃ちゃんこそ…急に改まっちゃって。」
「そう?私はいつもこんなんだよ?」
「そっか。まぁいいや。告白の返事、できたら教えるね。できたら。」
「あっ…うん。」