「はい。では、今から委員会決めを始めます」
うわ〜!
とうとうこの日が来たよ!
ドキドキする…
「まず、学級委員の男子です。学級委員を志望する人はいますか?」
一瞬の沈黙…
「はい!」
前の方の席の人が、勢いよく手を挙げた。
び、びっくりした〜!
「は、はい!」
続けて、斜め前の人が手を挙げた。
ということは…?
「あ、学級委員の男子は2人いますね!」
先生としては、予想外だったらしい。
「では、2人とも前に出てきて下さい。えー、それから一人ずつ、決意表明をして下さい」
「え?」
「マジでー?」
「めっちゃ緊張するやつやん!」
教室が一気に騒がしくなった。
「静かにして下さい」
先生の声で、急に教室がしんと静まり返った。
先生恐るべし。
「えー、学級委員を志望しました。本永蒼です。僕は、小学生のときから、人前で話すことが好きで、良く発表会では司会をしていました。みんなのことを全力でサポートしていきたいと思います。よろしくお願いします」
パチパチパチパチ〜!
大きな拍手喝采。
凄いな…
中一って、こんな風に言えるの?
あ、言えないのは私だけかぁ〜
「同じく、学級委員を志望しました。川上陽太です。僕が学級委員を志望した理由は、二つあります。一つは、先程の本永くんと同じで、人前で話すことが好きということ。もう一つは、昔から憧れていた委員会だったからです。話すと長くなるので、ここで切りたいと思います。ということで、僕が学級委員になったら、女子の学級委員さんと共に、クラスをまとめていきたいと思います。よろしくお願いします」
うわぁー!
さっきの人よりも話すことが凄い気が…
そんなことないかな?
この後、女子の学級委員も決めるんだよね!
楽しみだなぁ〜!
「ということで、皆さんは伏せて下さい。もちろん、一人一回だけしか手は挙げないで下さい」
よし、決まった!
「では、本永くんが良いと思う人は手を挙げて下さい。…下ろしてください。次に、川上くんが良いと思う人は手を挙げて下さい。…下ろしてください。顔を上げて下さい」
え、もう決まったの!?
どっちかな〜?
どっちかな〜?
「学級委員になったのは…」
ゴクリ
「…川上くんです!」
「きゃ〜〜!!」
「川上だー!」
「おめでとう!」
わぁ〜〜っと拍手が起きた。
なんか…
本永くん、忘れられてる?
本永くんは、今にも泣きそうな顔でうつむいていた。
え、泣いてる…?
先生は気付いたらしく、本永くんに微笑みながら声をかけているみたい。
先生優しい…
ま、当たり前か〜
川上くん、それにしても人気だなぁ。
嬉しそう。
「みんな、ありがとう!僕、みんなのために頑張ります!」
「きゃ〜〜!」
「川上くんやるぅー」
特に、女子から人気!
顔面偏差値も高いよね!
眼鏡の奥の瞳が、きゅっと細くなった。
キュン♡
確かに、ちょっとドキドキしちゃうのも分かる気がする。
川上くん、頑張って〜!
心の中で、そっと彼に言う。
「はーい。次行きますよ。では、女子の学級委員志望の方は手を挙げて下さい」
「はい」
涼香!!
涼香…お願い。
頑張って…
「他にいますか?」
「はい。」
「他は…」
「あ、はい!」
「これで以上ですか?」
「はい!」
え、四人…?
「他は…いませんね。では、一人ずつ決意表明をして下さい」
マジで言ってるのっ!?
そんなの無理じゃ…

ーそんなこと考えるの、あさひらしくないよ。
もっと前向きに考えようよー

そうだよ。勝手に無理だって決めちゃうの、良くないよね!
私、涼香を信じなきゃ!
そわそわしている間に、もう始まっていた。
「学級委員を志望しました。秋月志織です!私は…」
2人目…
「同じく学級委員を志望しました。花島明花です。私は…」
3人目…
「同じく学級委員を志望しました。平田慶香です。私は…」
そして、4人目…
私は、心の中でそっと、エールを送る。
頑張れ!!
涼香なら大丈夫、と。
「学級委員を志望しました。小川涼香です。私は、昔から誰かのために役立つことが好きで、今回学級委員を志望しました。もし私が学級委員になったら、私をどんどん頼って下さい!以上です。」
話すことは短いのに、涼香はやっぱり凄い…
これは涼香しかないね!
私は涼香を推薦した。

やはり女子の学級委員は涼香に決まった。
涼香はクラスの人からの人気が高く、ほぼ全員が涼香を推薦したという結果になった。
正の数、半端ない…
涼香は本当に凄いなぁ。
黒板の涼香の欄には、正の数が他の候補者とは比べものにならないくらいの数。
私はクラスの子の後に続いて大きな拍手を送った。
私も頑張らなきゃ…!
だって…
「次に、放送委員をご希望される方は挙手して下さい」
こ、これに希望することにしたからなんだ。
でも、初めてだよ。
決意表明は。
こんなことしたことないない!
緊張するよ〜!
でも、涼香が勧めてくれたし、私もやってみようかな?って思ったから。
必ず決意表明は成功させなきゃならない。
挙手するんだ、私!
「はいっ!」
私はピシッと、手を上に突き出した。
つい力んでしまって、大きな声が出てしまった。
あ…
どうしよう。
みーんなが見てるよ…
「では、花村あさひさん。前に出てきてもらっても良いですか?」
え、一人のときも決意表明するの!?
そんな〜!
「えー、花村さん一人だけなので、決意表明はしなくていいですが」
が…?
「やっても良いですよ。やりますか?」
え、そういうこと?
じゃあ…
「や、やらないでおきます…」
これでいいかな?
「分かりました。では、自分の名前を黒板に書いてください」
さっきから、ドクドクと心臓の鼓動が鳴っている。
ふぅ〜
“ 花村 あさひ ”
よし、書けた!
「じゃあ自分の席に戻って下さい」
先生に言われるがまま、私は自分の席に戻った。
本当に私、みんなのまえで立つことって無理なんだな…
「そういえば、どうして花村さんは放送委員を希望したの?」
先生の声が教室に響いた。
え、え、え
私、なんて答えればいいの?
「いや、その…友達に放送委員どう?って聞かれたので…」
みんな、私の方をじっと見ている。
ちょ、ちょっと言いづらいんだけども…
「そ、それで、自分も少し興味があったので…」
これは本当の話。
でも、もとから気になっていたのではなく、涼香に進められてからの話。
ちょっと嘘ついちゃったかも!
どうしよう…
「そうなんですね!花村さんはクラスの代表なので、頑張って下さいね」
クラスの代表…?
「放送委員だけ特殊なんです。他のそれぞれの委員会は、クラスで2人ずつなれるんですけどね」
そう、だった…
私だけなんだよね。
放送委員になったこと、間違ってたかも…
いや、放送委員に入ったことで、私、変われそう!
頑張ろう!