‪翌日。
私は、不安と悲しみでいっぱいだった。
沢田の告白の返事。
そして、瑠璃ちゃんとのちょっとしたすれ違い。(?)
はぁー。
私、落ち込んでばかりいるかも。
いつものように、少し小走りで学校に行く。
ふぅ〜。

朝は、瑠璃ちゃんと合わなかったな〜。
学校に着いてから、瑠璃ちゃんの下駄箱を見てみたけど、やっぱりまだ来てないっぽい。
沢田は…?
沢田の出席番号である15 番を見た。
…来てないね。
良かった〜。
来てたらどうしようかと思った〜。
安心しながら他の番号も見てみる。
あれ?私だけしかまだいない!?
自習でもしてようかな?
私は上履きに履き替えて教室に向かった。
「えっ…」
教室のまえで思わず足を止めてしまった。
だって…
さ、沢田!?
なんで……?
だって、下駄箱に靴は無かったよ?
どういうこと?
沢田は、教頭の上にプリントを置いている。
どうしよう!
どうしようどうしよう!!
私、どうすればいいの?
廊下には私、一人だけ。
ちょっと体を動かすだけで、ランドセルに付けているストラップが揺れて、カランコロンと音が鳴ってしまう。
このままの姿勢でいる?
いや、もし沢田がこっちに来たら…?
胸がドキドキしてきた。
こんな状況って初めて。
教室に入れないじゃん!
今は教室の外の壁で待機中。
でも、このままでは良くないって分かってる。
どうしたらいいの…?
そういえば、沢田、手紙に気付いたのかな?
私はゆっくりと体を動かした。
でないと、ストラップが動いてしまうからだ。
もう少し、もう少し…
もうすぐで、教室にいる沢田が見えるというときだった。
「あさひ!!」
る、瑠璃ちゃん!?
うそぉぉ〜。
なんでこういうときに!
「るる瑠璃ちゃん!」
「そこで何してる…」
「しーーっ!」
「えっ…」
「さ、さわ、沢田がっ!」
「えっ!沢田が!?」
「そうなのっ!どうしよう。」
「えっ、教室に他の子はいるの?」
「それがいないの。」
「マジで?」
「うん…」
瑠璃ちゃんはうーんと考え込んだ後、先に教室に入っていった。
「ちょ、ちょっと!?瑠璃ちゃん!」
私は、壁に耳を当てて中の声を聞くことにした。
「あっ、瑠璃…」
「沢田おはよう。」
瑠璃ちゃん、全然平気そう…
普通、男子と二人きりになるのは好きな男子とじゃなくても嫌なんじゃないのかな?
「なぁ、みんな来るの遅くね?」
「そう?」
「うん。みんな何してるのかな?」
「さぁ…?」
「ちょっと外でも見てこようかな?」
!?
「あっ…それは…」
「え?」
「いや、あの、やめた方が…」
「なんで?」
「あっ!あれ、沢田のじゃない?」
「え?どれ?」
瑠璃ちゃん、私を守ってくれた…?
「この消しゴム。違う?」
「うん。違う。」
「そっか…」
「…」
「あ、あのさ、机の中見せて?」
「なんで?汚いよ、俺の。」
「いいのいいの。いい?」
「えー、やだよ。」
「お願い!というか、私、美化委員なので見せて頂きまーす。」
瑠璃ちゃんって美化委員じゃないよね?
確か、体育委員会だよね…
これも、瑠璃ちゃんの作戦?
「え、マジ?」
「そうだよ。ということで見てもいい?」
「…やだよ。」
「えー、それはダメ!…じゃないと、先生に言いに行くよ?」
「え、それはダメ!」
「じゃあ見せてくれる?」
「…分かったよ。」
瑠璃ちゃん、本当にありがとう。
「…もういい?」
「うん。もういいよ。」
瑠璃ちゃん、一通り机の中見たみたい(?)
手紙、どうだったのかな?
「えっ…」
「どうしたの?」
「これ…」
「あっ…」
もしかして、気付いちゃった!?
「この白い封筒何だ?」
「…何だろう?」
「ちょっ、待って!?」
これは…
私の手紙のことだ!
「何よ?」
「…花村あさひだって。」
「そ、そうなんだ?」
私、もうここにいられないかも!
「…まさか、告白の手紙とか?」
うっ。
沢田、なんでそう思ったの!?
「…あぁ、確かに…」
瑠璃ちゃん、お願い!助けてー!
「…ここで開けない方がいいんじゃない?」
「…でも。」
「あさひ、可哀想じゃない?」
瑠璃ちゃん…
「まぁな。」
「私、ちょっ、ちょっとトイレ行ってくる!とにかく、それは家で見た方が身のためだよ!」
「…は?」
ガラガラ
「る、瑠璃ちゃんっ!」
「…沢田、開けちゃうかも!」
「瑠璃ちゃん。ありがとう。でも私、やっぱり教室に入らなきゃ。」
「で、でも…」
いいの。
もうこれ以上瑠璃ちゃんに頼る訳にはいけないと思うから。
「…分かった。じゃあ、一緒に教室入ろう?」
「うん。」
ガラガラ
「…瑠璃?もう帰ってきたのか?」
ゴクリ
私の存在には気付いてない?
「あっ、あさひ…」
「沢田、おはよ…」
「あ、あの…」
今までのことは知らないフリしていればいいよね。
「何?」
「あのさ、この手紙、あさひが書いただろ?」
「…」
消えてしまいたい…
「ちょっと沢田?それ、開けたの?」
「…いや、その…」
「何であれほど言ったのに…!」
「ごめん!気になったから…」
「い、家で見てくれるかな?」
「…あ、あさひ?」
瑠璃ちゃんはびっくりしたように私を見た。
だって、私が言わないと、沢田は今読んでしまうかもしれないから…
それに、もう読んでいるかも!
そしたらもう遅いよね…
「あさひごめん!俺、読んじゃった…」
そんな…
汗がたらりと額から流れてきたのが分かった。
私、私…
なんて言えば…
瑠璃ちゃんは、口を空けたまま何も話そうとしない。
瑠璃ちゃんも、なんて言えばいいか分からないんだよね。
そのまま、しばらくの沈黙。
カチッ、カチッっと教室にある時計の針が動いているだけ。
それ以外の音は何も無い。
沢田は、下を向いて顔を真っ赤にさせている。
「…あのさ。」
「…」
「…」
「俺、あさひに言いたいことがあるんだ。」
「…え。」
先に話を再開させたのは沢田。
でも、私、何も言いたくないよ。
「瑠璃。」
「…え?」
何で瑠璃ちゃん?
「…俺とあさひ、二人だけにさせてくれる?」
え…
「え…」
「お願い!」
「わ、分かった。」
瑠璃ちゃん行かないで!
ガラガラ
瑠璃ちゃんは、私をちらっと見たあと、教室から出て行ってしまった。
私、何を言われるの?