次の日、ぐっすりと眠れたセンジュの体はとても好調だった。

「体が軽い・・フォルノスのおかげ???」


疲れが吹っ飛ぶほど体調が良かった。

寝ている間にフォルノスが力を使ってくれていたなど知る由もない。


朝食を食べ終え、着替えを済ませたタイミングでセヴィオが中に入ってきた。

「よお、センジュ」

「セヴィオ、おはよう」

「ああ・・・」


セヴィオの様子がおかしい。どうやらセンジュに気を使っているらしい。

昨日の件で眠れなかったのはセンジュとフォルノスだけじゃない。


「体調はどうなんだよ?」

「うん、良いよ」


にっこりと満面の笑みを浮かべるセンジュを見てようやくセヴィオも緊張が解けた。
しかし顔は真面目な顔をしていた。

「なら良かった。その・・ルキの事なんだけど」

「あ、そうだったね。どうだったの?」


深刻そうだ。


「殺されたんだ・・」

「え!?」

衝撃が走る。

体中に緊張が走った。

「昨日エレヴォスに尋問を受けて、その後の帰りに誰かに・・」

「なんで・・」

「エレヴォスが言うには、特に裏に繋がる話もなかったらしくて・・寮にもそれらしい情報の材料は見当たらなかった。だから一時解放されたんだ」

「それなのに・・一体誰に・・」

「ああ、怪しすぎる。きっと誰かがルキの事を聞きつけて消したに違いない」

「そんな・・・ルキ君・・」


_同じ魔族なんだったら、もっと仲良くしたかったのに・・。


ルキの顔が浮かぶ。高校のクラスで喋ったこともある。

久しぶりに会えたと思った矢先の出来事だ。


「それで今はアルヴァンが捜索に駆り出されてる。学校の生徒全員に聞き取り調査するって」

「アルヴァンさんが・・」


落ち込んだ様子のセンジュにセヴィオは労った。

話をしたらショックを受け落ち込んでしまうのは目に見えていたからだ。


「ルキの事は残念だったけど、落ち込んでもいられない。犯人を捜さないとならないし、天界の事もある。いつ天使が攻めてくるかわからないしな」

「うん」

「気を引き締めて行こうぜ。ルキの為にも」

「そうだね・・・うん、わかった!」


力強く頷くと、セヴィオはセンジュの頭をくしゃっと撫でた。

センジュの眼は潤んでいたが、悲しみをぐっと飲みこんだ様だった。


「お前、更に逞しくなったな。天界に行ったからかな」

「え?そうかなー?」

「頼もしいよ」

「えへ・・褒められると照れるよ・・・って、え!?」


顔を背けた先に、にんまりと微笑む2人の陰を見つけた。


「朝からゴチでーーっす」

「ゼン君!?」

「セヴィオ、うらやま・・あーいいな~」

「クロウ君も」

「お前ら、今真面目な話してんだよ。空気壊すなよ」


呆れた顔でセヴィオが説明してくれた。いやいやな感じだ。


「忘れたか?今日からこいつら城での任務。逆に面倒くさいんだけど」

「あ、今日からなんだ!」

喜んでいると、ゼンとクロウはセンジュの手を握った。


「姫さま!この命に代えてもセヴィオなんかより先に御守りいたします!」

「俺も俺も!頼ってください!セヴィオよりも!」

「え、えっと・・ありがとう」

センジュは勢いに引いている。あきれ果てたセヴィオは嫌味で対応した。

「そうだな、俺よりも先に死ぬだろうな、お前ら」

「はあ!?絶対に生き残るし!」

「そうだ!そうだ!」

セヴィオは耳に指を入れて眉をしかませた。

「あー、うるせ」

「フフ・・楽しそうだね。セヴィオ」

「どうだかな。俺の評価下がったらと思うと不安で仕方ねえんだけど。さてと、仕事行くぞ。お前らは俺とセンジュの盾だかんな。いいな」

「はー?姫さまの盾はわかるけど、なんでセヴィオ?」

「お前ら、俺の事上司と思ってねえな?」

「当ったり前じゃん!」


ぶち。とセヴィオの血管が一本キレた。


「舐めてるとフォルノスの隊に送るぞ!?いいのか!?」

「うわっ!きたねえ!職権乱用だ!」

「お前らが無礼極まりねえからだろうが!」

「やだやだ!それだけは勘弁して~」

とんでもなく賑やかになった今日この頃である。

「アハハっ」

センジュは笑った。


_ルキ君の事は残念だけど・・前を向かなきゃ。昨日フォルノスに誓ったんだから。


3人に元気を分けてもらい、決意をしっかりと確認できたセンジュだった。