「うん、良いね。青春」


ビックンッ!!!

突然の魔王の声に2人はお互いから離れた。

「パ・・パパ」

「ベリオルロス様」


すぐにセヴィオはひれ伏した。

センジュは慌てふためいている。


「あ、あ、あのね!これはね!フォルノスがね!」

「うん。なんかそうみたいだね。フォルノスの天馬が見えたから様子を聞こうと思ったんだけど、まさかの青春劇場が見れるとは思っていなかったよ」


ドカアアアァ///


センジュはとてつもない恥ずかしさに顔を手で覆った。


_パパにだけはこういうの見られたくなかったのにいいいっ!!!



魔王はワザとらしく泣き顔を見せた。涙は出ていないが。


「センジュがお嫁に行く瞬間て、きっとこんな感じなんだろうなあ。ああ、寂しいなぁ。しくしく」


_パパが嫁げってここに連れてきたんでしょうが!しくしくっておい!


「パパ、恥ずかしいから止めて!」


今更だが、セヴィオの部下達も近くに待機していたのだった。

しかし青春劇場はしっかりと部下達にも見られている、というのをセンジュは忘れている。すでに恥ずかしい状態で事は進んでいた。本人は知らないが。

魔王はキリっと仕事モードへと切り替えた。どうやらセヴィオとフォルノスのチェンジは許されたらしい。

魔王はフォルノスの代わりにセンジュに状況を尋ねた。

「で、ラディエルはまだ見つからないんだね?」

「・・うん。階段の方にもいなくて。エレヴォスさんは人間界の様子を見に向かって、アルヴァンさんは階段付近を捜索してるよ」

「そっか。なかなか上手く隠れているようだね。流石は大天使の側近だ」


_ラディエル・・きっとケガもしてるハズなのに。


「城は隅々まで調べ尽くしたから、センジュは安心して部屋に戻りなさい」

「はい」

「セヴィオ」

ドキン

「は」

「次はないよ」

「パパ!」


センジュが怒ると魔王はにっこりと微笑んだ。


「激励を贈っただけだよ。せっかちだなセンジュは」

「必ずや命に代えても御護りします」


_冗談にも聞こえないし。パパの口からじゃ・・。セヴィオだって真剣な目してるしさ。


もう誰かが傷つくのは見たくない。

見たくないけど・・。

私も頑張らなくちゃ。


立ち上がったセヴィオに肩を貸そうとしたが、セヴィオに断られた。


「平気だ。てか、カッコつかねえだろうが。察しろ」

と小声で言われた。


_あ、パパの前だからか。ごめん、セヴィオ。


センジュを護る様にセヴィオとその部隊は城へと向かった。


「フフ・・センジュは頼もしいな。いつの間にか皆をまとめ上げてるし。もう立派な王女様だね、ねぇアンジュ」


魔王は満足そうに笑うと、その場から姿を消した。