あれから3日が過ぎようとしていた。

フォルノスは魔王の命令でしばらく城にはおらず、セヴィオはケガが増えた為にしばらく自分の屋敷で療養となった。

エレヴォスとアルヴァンが交代で護衛についてくれていた。


「センジュ~どうしたんだい」

ぎゅうううっ

「ぐええっパパ、苦しい」

「ごめんごめん今日も可愛くてつい」


_つい、で毎回殺されそうなくらい圧迫されてるんですけど私。


センジュは今日の護衛であるエレヴォスに頼んで魔王の元へとやってきた。


「で、どうしたの?」

「ええとね・・」

「んー?」


魔王はいつも以上にニコニコしている。

センジュに必要とされ喜びのハートが飛び回っている。


「ちょっと学校に興味があって」

「ん?街のかい?」

「うん。私、毎日みんなに力の訓練を見てもらってるんだけど・・いまいちつかめないっていうか・・みんなとは能力が違うから出せないのかなって思って」

「なるほど」

「それで・・エレヴォスさんのお父さんが学校の理事長だって言うから、他の子達の授業を見てみたくて」

「あー、そうだね。確かに学校の理事には元四大魔将のフォヴォスがいるね」


それにはエレヴォスも頷く。


「姫君もスランプの様ですし、せっかくなので気分転換に見学に行こうと思います」

「うんうん、いいんじゃないか?お前がいれば安心だし」

「でね、パパにお願いって言うのはね」

「うん?」

「もし、学校に通う事になっても、干渉しないで欲しいって事なの」

「・・・ん?なんでだい」


魔王はセンジュの言葉をちっとも理解出来ない。


「パパ、魔王だし・・みんな驚くし。怖がるし」

「え、結構ショックな言葉なんだけど。まあ事実だけど」

「だってさ、みんな私の事爆弾みたいに取り扱うんだよ?もっと普通に生活したいのに」


「それは仕方ない事だよ。パパの娘なんだから」

「スラムの事で私の事はバレてるからみんな色眼鏡で見てくるっていうか」

「お前は特別な存在だからねぇ。誇らしいよ」

「せめて自分の力で行動出来る様にしたいの。パパの名前は使いたくないの」

「お前の気持ちもわかるけど・・危なくなったらどうするの?」

「自分で何とかするし、危なくならない様にするから」

「そんなのわからないよ?何が起こるかなんて」

「大丈夫」

その言い合いにエレヴォスはハラハラしていたが、とりあえず様子を見る事にした。

黙って聞いている。

センジュは続けた。


「でね、もし力も発揮出来る様になってきたら、いつか護衛もいらないと思ってる」

「どうしてそう思うの?」

「だって、自分の身は自分で守らないと」

「結構びっくり発言なんだけど、どうしたの?何があったの?」


魔王は目をきょとんとさせている。

フォルノスに好かれたいからなんて言えるハズがない。


「パパの娘だから。もっと強くなりたいし・・一人でも魔界を歩けるようになりたい!」

センジュの瞳は真剣そのものを語っている。

エレヴォスは困った顔をしながら顎を掻いた。

「私はお止したのですが、どうしても我が君に想いを伝えたいとの事で・・・ご判断をお願いいたします」

「うーーーーーーーーん。」


魔王は考えるポーズのまましばらく固まった。

そしてこう答えた。


「ま、やりたいようにやってみていいよ。でも、学校に行ったからといって力が使える様になるとは限らないし。過度の期待はしちゃ駄目だよ」

「うん。わかった。でも、頑張りたい」

「センジュ、いい?まだ一人歩きを許した訳じゃないよ。お前はまだまだ人間と同じだ」

「・・はい」


「でも、いつまでたっても皆の後ろをよちよちしているのは確かに王女としては問題がある。王女らしく自信をもって欲しいから行かせるんだからね」

「うん!ありがとうパパ!」


センジュの瞳がキラキラと輝き魔王を見つめた。

魔王はにこやかだったが、しっかりとエレヴォスに釘を刺す。

「エレヴォス、手配は頼んだよ。だけどわかってるよね?私の言いたい事」

「御意に」


魔王は学校に通わせるつもりは毛頭ない。

あくまでも今回は気分転換だという目でエレヴォスに訴えた。

危険はいつ何処で起きるのかわからないのが魔界だ。