その日の夜、夕食を終えたセンジュの元にエレヴォスがやってきた。

「セヴィオが目を覚ましました。面会しますか?」

「行く!行きます!!」


椅子が倒れそうな勢いでセンジュは立ち上がった。

アルヴァンから教えてもらったのだが、セヴィオは不意を突かれウリエルに刺されたのだと聞いていた。

眠っていたセンジュに落ち度はないが一番の被害者はセヴィオだとセンジュは思っていた。


「では、アルヴァン。センジュは私が警護します」

「ああ、頼む。俺はちょっとフォルノスに用事がある」

「そうですか。ではセンジュ」

「は、はい!」


エレヴォスに手を差し伸べられ、センジュはその手を取った。

廊下を歩いている最中、センジュはジッとエレヴォスを見つめた。

「どうしましたか?」

「あ、いえ・・なんで私・・あの時エレヴォスさんと間違えちゃったんだろうって思って」

「ああ、天界の者ですね。よく似ていたとフォルノスに聞きましたよ」

「はい・・でも、エレヴォスさんのほくろが無い事に途中で気づいたんです」

「おや・・」


エレヴォスは嬉しそうにセンジュの手をきゅっと握った。

「そんな細かい所まで私を見ていてくれたなんて嬉しいですよ」

「あは、あの時・・顎に頭を強打しちゃったから・・」

「フフ・・そうでしたね」


センジュはエレヴォスに自分の事をどう思っているのか単刀直入に聞いた。

「私の事、どう思いますか?」

「どう・・とは?」

「私のママが天使だったから・・その」


_拒否されるのが怖い、なんて言えないけど・・。


「おやおや、そんな事ですか。てっきり告白かと思ったのに残念です」

「え・・っとぉ・・」


_という事は特に気にしていないって事なのかな・・


不安げに見つめると、エレヴォスはいつも通りニコリと優しい笑みを見せてくれた。


「面白いではありませんか。そういうの」

「え・・」


_お、面白いって何?


「特別感が更にアップして」

「そう、思ってくれるんですか?」

「ええ。それに我が君の血を継いでいるのも事実です。アンジュ様の事は残念ですが、そんな事は些細な事です」

「よ・・良かった・・エレヴォスさんに嫌われたらどうしようかと」


ホッと安堵の息を吐くと、エレヴォスは握っていた手にキスをした。


「我が君に害をなすと言うのなら話は別ですが、今の所なさそうですしね。我が君もあなたを認めていますし」

ドキン


_それって、いきなり敵にされることもあるって事・・かな?それは怖いな。


「そんな顔しないでください。私はセンジュの事、信じていますからね」

「・・はい」


_が、頑張ります。


警告されているという事だ。ぴりっと緊張が走った。