静まり返った部屋にノックが聞こえる。

「はい・・」

「失礼いたします、エレヴォスです」


入って来たのはいつもと少し表情が違うエレヴォスだった。

笑顔はなく陰りがある。

「どうしたんですか?」

「残念なお知らせがあるのです」

「え?」

言いずらそうにエレヴォスは口を開いた。


「先日、姫君がスラムの者達に援助をした件なのですが・・」

ドキン

「あ・・はい」

「・・暴動が起きております」

「え!?」

「その者達は姫君にいたく感心を抱き、自分達の街を変えたいと張り切っていたそうですが、一部良く思わない者達がいたようで」

「それって・・」

「負傷者が出ております。このままではあの街は・・」

ドクン

ドクン

ドクン


頭の中が真っ白になった。


_私のせいで・・?どうしよう!?余計な事したの!?やっぱり私は__。


ぽん。


「あ・・」


フォルノスの手のひらが頭に乗った。


「どうした。また頭痛か」


その言葉にじわりと涙が浮かんだ。


_フォルノスの言った通りだった。事件を私が招いてしまったんだ。


「行くぞ」


「・・え」


「見に行く。一緒に来い」


フォルノスは立ち上がりセンジュの手を引いた。


「お前は確か、あの方と政務だったな」

「ええ、申し訳ありませんが・・」

「わかってる、任せた」

「ええ、我が君の事はお任せを」


魔王にはまだ伝えてない。どう治めるかによって魔王の機嫌は変わるだろう。

エレヴォスに見送られながら2人は城を出た。


ピーーー


フォルノスが指笛を吹くと、空から黒天馬が飛んできた。

フォルノスはセンジュを抱き上げるとそれに乗せた。

「今日は落ちるな」

「ん・・」


落ち込んだ様子のセンジュは小さく頷いた。

わかっていたがフォルノスは気にせずに馬を飛ばした。


「落ち込むのは勝手だが、終わってからにしろ。自分が関わっていると思うのなら、最後までやり遂げろ」

「・・うん。ごめん」

「そこは謝るところじゃない」

「え・・」

「解りました、が正しい」


そう言ってフォルノスは前を向いた。

まだセンジュと出会う前、魔王から聞かされていた。

センジュは人間界で母親と2人で育ち、世間を知らない子供だと。

魔界の子供の様に5歳から仕事の訓練を学んでいくわけではない。

日本は人間界の中でも平和な国で、命のやりとりなどもほとんどない。

そんな環境で育ったセンジュをどう魔界で生かすか、それは四大魔将の采配によって決まるだろう。

そのため、フォルノスは近くへ寄りそう事は避けようとしていた。

無駄な情が入ってしまうと面倒だと感じたからだ。

常に遠くで監視しながら学ばせ方を考えていた。


「見えてきた。火事が起きているな」

「・・うん」



_どうしてそうなるの?皆楽しく夕食を食べたって聞いてたのに。