「……そうだな。悪いが、大目に見てやってくれ。あいつには、迷惑を掛けているから」
迷惑? 思わず、首を傾げた。
少なくとも、あの子はちっともそんなことを思っていないようだったのに。
「ああ……見目のいい童が、独り身の男の側にいると、な。おかしなことを言う輩もいるから。無理はしなくていいと言っているが、あれで頑固なのだ。私から暇を出せば、それはそれで可哀相な目に遭うだろうし」
そういうことか。
モテるのに浮いた話もないとなると、嫌な噂も立つのかもしれない。
おまけに、妹に手を出したと知れたら、もっと酷く言われたりしないだろうか。
「私のことは、好きに言わせておけばいいさ。周りに何と言われようと、私は私の決めた幸せを取りたい。……たとえ、一時のものでも」
人の幸せを、本人以外が決めることはできない。だから、恭一郎様がそうと決めたのなら、それでいいのかもしれない。
でも、私のせいで、今までもこの先もずっと悪く言われてしまうのは辛い。
「それより」
俯く必要はないというように、軽くその指に上向かされた。
「……また、泣かされたのか」
包むというには、触れる面積が狭い。
再び目元に移動しようと動いた拍子に耳朶に当たり、ついピクンと肩が揺れた。



