「……そうか。それくらいなら、せっかくの姫の誘いを断る理由はない。しかし、ここには兎の目がないな」


私を徹底して妹ではなく女性扱いしながら、そんなことを言ってくれた。
おまけに、南天の実が見当たらないことを心配してくれるなんて。


「いいんです。ただ、一緒に作りたいだけだから」


雪うさぎに付き物の赤い目がないのは残念だけれど、今なくてはならないものではない。
大切なのは、もし許してもらえるならば、私らしい方法でもう一度近づきたいということ。


《まったく。お二人とも、一応は生身の人間ではないのですか。化け物ですら、この雪景色を見て外遊びをしようとは思えないのですが。気が済んだら、部屋で温かくなさってくださいよ》


雪の妖怪を名乗る狐に愛想を尽かされ、またクスリと笑う。
でも、それも雪狐の優しさなのだろう。


「さて。そうなれば、早く始めよう。でないと、雪うさぎを作るどころか姫の方が雪だるまになってしまう」


真っ白の敷物みたいな雪の上を歩く。
寒そうな足に眉を顰めたが、恭一郎様はやれやれと首を振るだけで何も言わないでくれた。
風変わりではあるが、一応逢瀬と呼ぶのであればと注意するのは遠慮してくれたのかもしれない。

もう間もなく一面白く染まろうかという地面を踏むのは、ちょっとだけ残念な気もするけれど。
それでも、久しぶりに胸が踊る。
ドキドキや胸を締め付けるようなきゅっとする感覚でもなく、単純にわくわくする――というのは、さすがに語弊があるか。
正直に言うなら、もちろんドキッとはするものの、上手く呼吸できないような息苦しさではない。
兄様ではない恭一郎様を見上げてそう思えることに、とても安堵するのだった。