「まあ、どちらにしても春になったら会えなくなるのは困るな。それで、どうした? 」
さりげなく雪を払ってくれる本人の狩衣は、まだ粉雪が解けきれず残ったままだ。
大した用ではないと知りながら、駆けつけてくれたのだろう。
「……ごめんなさい。お忙しいのに呼びつけたりして」
「いや。それは問題ないが」
驚いた声がすぐに困惑に変わる。
無理もない。
今まで酷い態度だったのに、急に呼び出されたかと思いきや、そのくせしおらしく謝るなんて。
「……あの……ただ、一緒に遊びたいなと思って」
冷えた空気が胸に広がったのは最初だけで、すぐに恥ずかしさで全身に熱がまわる。
「なるほど。色っぽい話ではないことは確かだな。だとしたら、何をして遊ぶ? 言っておくが、かくれんぼや鬼ごっこは駄目だぞ」
前半の余計な一言が、ちっとも残念そうには聞こえなかったことが嬉しい。
ああ、本当に久しぶりだ。
つい最近まで、こんなのいつものことだったのに。
こうしてまた笑い合える日は、もう来ないかもしれないと思っていた。
大丈夫。
今なら、この雰囲気なら言える。
「じゃあ……雪うさぎを作りたいです。……恭一郎様と」
譲歩したみたいに言ってはみたが、最初からそのつもりだった。
あの子の夢を見て、思い出したのだ。
もう一度、一緒に作ってみたい。
昔、兄様ともよく作ったように、今度は恭一郎様と。



