明日、雪うさぎが泣いたら





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とても、ありきたりの内容だった。
以前のような、ただただ甘い文を書くこともできただろうに、敢えてそうしたのだと思うと切ない。
押し返されて知った距離の遠さを、どうにか受け入れた後のような。


《姫。医師殿が来てから、外に出ればよろしいではありませんか。いえ、そもそも外で待たれる必要はないでしょう? 》


真っ白な空から降る雪は、舞うというよりは頭めがけて一直線に落ちてくるみたいだ。
あまり風情も色気もない表現だけれど、わりと的確に表していると思う。


「お勤めの時間を指定してしまったもの。きっと、終わられたらいらっしゃるだろうから」

《ならば、尚のこと中へお入りください。いつ来るとも知れないのなら、余計に姫が御身を冷やす理由がない。多少、医師殿を待たせたとて何の問題もありますまい》


あの後すぐに返事を認め、使いを頼んだ。
まずはあの童に渡してちょうだいとお願いしてみたが、喜んでもらえただろうか。

お小言を漏らす雪狐に頬を緩ませながら、私はすぐに庭に出れるよう立っていた。
相手はあの方――兄だった人なのだから、堂々と部屋に入ってくるかもしれないけれど。
ううん、やはり今回はそうしないのではないかという気持ちの方が強かった。
それに、「もし、その後お時間があれば」と付け加えたものの、こんな時間にいきなり呼び出しておいて、ぬくぬくと待っているなんてできなかったのだ。


「私は、余程その狐に嫌われているらしいな。どうでもいいが、そのとおりだ。お前が雪の精でもない限り、風邪を引く」

「……大雪を降らせる? 」


よかった。
まだ振り向けずにいるけれど、ほら。
笑い声がする。