明日、雪うさぎが泣いたら



もう二度と聞けないかもしれないと覚悟していた友人の声に、固まってしまう。


「一彰……どうして」

「いいから、奥に引っ込め。雪景色の中の大雪なんぞ見たくない」


相変わらずの暴言も、ちっとも反応できない。
言われたとおり部屋の奥へと移り、一彰が中に入ったところできっちりと戸を閉めた。


「ちゃんと許可は取ってある。俺はその……長閑に会いに来た。途中、見たくもない顔が見えるのはあいつも承知の上だろ」

「……大丈夫かしら。大っぴらなのも目立つけれど、こそこそ小雪に会うのも怪しすぎるし」


彼女らしくなく、そわそわした様子の長閑に一彰の目が細くなる。
彼を心配して動揺を隠せない長閑も、それを愛しそうに見つめる一彰の視線も。
端から見ていてむず痒く、嬉しく、どうしても壊したくない。


「大丈夫。俺は嘘は言っていないから。長閑のところへ通っていたら、邪魔がいただけだ。それがたまたま、あいつが口説いている女だった。第一、あいつは先に話を“通せ”と言っただけだ。……会うなとは言ってない」



恭一郎様も同じ気持ちだった。
ほっとして、へなへなと崩れ落ちそうになる。


「とは言え、恭はできないことは言わない。正直、申し出てみるまで自信はなかったし、どこまで許されるかは不明だが……まあ、別にそこまで大雪に会いたいわけじゃないからな」

「あんたはそうでも、 私は結構堪えてたわ。ともかく、一彰が長閑に逢えるようになってよかった……」


最悪、長閑を別の邸に――密かにそんな考えもあったのだけれど。
彼女が反対しても、自分のせいで親友たちの恋が壊れるなんて絶対に嫌だ。