この子の言い方からすると、これが初めてではないのだろう。
もう何度も足を運び、雪風に晒され。今日よりも無下にあしらわれることもあったかもしれない。
あの方も、どうしてわざわざこの子に頼んだのだろうか。たとえば一彰みたいに、もっと楽に邸に出入りできる者は他にもいるのに。まさか、それほど一彰を遠ざけたいのだろうか。
「……っ、違うんです! これは私が勝手にしていることで……あの方をこれ以上悪く思わないでください」
せめて、肩や袖に積もった雪を払おうとすると、それすら身を引かれてしまう。
どうやら、私にあまりいい印象はもっていないみたい。
「受け入れてくださいとは申しません。でも、どうか伝わりますように。主は姫を心から想っておいでです」
知っていると思っていた。
形はどうあれ、とても大切に想われていることは確かだと。
でも、そんなの勝手な思い込みと言い訳で、実際はあれから少しも触れようとはしない体のいい理由。
「……ありがとう。確かに受け取ったわ。だから、もうお帰り」
「……では」
ポンと――しかし、重々しく放られた文を私が拾うのを確認すると、彼は短くそう吐いてすぐさま走り去った。
「まあ。あまりに無礼な童ではありませんか? 」
「叱ってははだめよ。あの様子だと、本当に一人でお咎めを受けてしまうわ」
そう言いながら、侍女は私の返事に安心したように小さく笑って下がっていった。
「それにしても、あの子は兄……恭一郎様のことが大好きみたいね」
「それは……
「それは、あいつの不器用さを知っているからだ」



