明日、雪うさぎが泣いたら



異国人とか、鬼や妖怪とまで皆は言うけれど。
結局、彼がどこから来たのかは分からないままだ。
もしかしたら、神隠しにあったというその間、私は一時的にその世界にいたのかもしれない。
鏡や髪飾りだけではなく、たくさんの不思議なものを目にして憧れを抱き――恐らく共感したのではないだろうか。


「雪狐」

《……はい。我が姫》


まるで問われる内容を知っていたみたいに、いつもは弓形の目が今は大きく開かれている。


「前に雪狐が言っていた罪って何? あ、責めているんじゃないの。ただ、知りたくて」

《……あの頃は、私もまだ弱かったのです。今のような、獣の姿でいることもままならなかったのですよ。未熟な私は、外の世界を知りたがる小さな姫が可哀想で……つい、自らの力を過信し、使ってしまった》


それならば、やはり雪狐の責任などではなく、弱くて未熟だったのは私に他ならない。


《ちょうどその頃、あの男子(おのこ)も願っていたのです。ここではない、どこかへ行ってみたいと。その想いが引き合ったのか、元々時空に歪みが生じていたのかは分からずじまいですが……結果、二人は出逢い……とても仲良くなりました》


あの子も、どこか別の場所を求めていたんだ。彼にとってほんの短い間だったけれど、それは少しでも居心地のいいものだっただろうか。
だとすれば、とても不思議だ。
だって、そこは彼のいた世界そのものだったかもしれない。
もしくは、私がいるこの世界との狭間だったのかも。
そうすると、それほど嫌がった世界はほんの隣にあったはず。違いといえば、私には彼という大好きな存在があったことだけ。
ただそれだけで、それがどこであろうととても素敵な世界だったのだ。