明日、雪うさぎが泣いたら



貰えたことも、彼が髪につけてくれたことも覚えているのに、肝心の髪飾りがどんなものだったか全く思い出せない。

そう、あの夢の続き。


『いい子にしてた? 』

『うん……! 』


本当にいい子だったかは定かではないが、私はとにかく大きく頷いた。
本当かなと疑う苦笑いも、とても優しく聞こえたことも感覚として蘇ってくる。


(どうして……? )


「たまには紅も差したら?」

「長閑……」


それに、そういえば気になることがひとつ。
知りたいのに言い淀むのは、何となく想像がついているからだ。


「あの頃のものって、どこにあるの? 私、あの子からいくつか贈り物をされたのよ。たとえば、異国の髪飾りとか」


大切に大切に仕舞っていた。
でも、どこへ?
特にあの髪飾りはお気に入りで、毎日付けていた気がするけれど。
なくさないように、汚さないように、私にしては注意深く扱っていたと思うのに。


「それは……」


長閑が先を言わないことで確信する。


「……処分されたのね」


それも兄様――恭一郎様の命で。


「当時は恭一郎様も元服前だったし、皆の意見もあったのだと思うわ。きっと、貴女の気持ちと身の安全の間で悩まれたはず。……結果、全てご自分が処分すると申し出られたとか」

「そう……」


他に頼むことだってできただろう。
仮に兄様が言い出さなければ、他の誰かがそうしていた。
それなのにそれを選んだのは、私への罪悪感からだろうか、それとも――自分の手で、確実に処分してしまいたかったからだろうか。