《わーっ!?!? な、何をなさいます……! 》
「ふーんだ。……あ、男の子……? 」
雪狐をびろーんと抱き上げると、彼はいつになく焦った様子で空中でじたばたともがいている。
《……この入れものは、です!! いいですか、この身は借りもので、私自身に性別があるわけでは……っ》
ひげをピンと張って、ふるふると震えるのを可愛いと思うのは酷いだろうか。
でも、二又の尾っぽを持った狐の身体が借りものだなんて、ちょっと説明がつかないと思う。
《はしたないですよ、雪兎の君。婦女子だからどうの、などと言うつもりはありませんが。私の、その……まったく。まあ、少しでも元気になったのなら、よいのですが》
「ごめん。つい、気になって。……ありがと、雪狐」
逆立った毛を撫でると、すっとその通りに揃っていく。
大人で優しい雪狐。
私はまた、甘えてしまう存在をつくってしまった。



