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大声で喧嘩を売ったのはいいとしても。
やっぱり、自室でうだうだしているしかない私は格好悪い。
《雪兎の君》
少し落ち着いたのを見計らって、雪狐がそっと前足を私の膝に載せた。
「ごめんね。呆れたよね」
『我が姫』なんて呼んだのを、さぞ後悔させただろう。
もしかして、ここについてきたことすら。
《いいえ。私は、貴女のそんなところを好ましいと思っています。きっと、あそこに居合わせた者たち、皆》
嫌がられたらどうしようと思ったけれど、誘惑に抗えず雪狐を抱き上げる。
「兄様とあの子の間で、行ったり来たりしてるんだよ。そんな女を好ましいなんて」
《おや。そう自己嫌悪なさいますな。私の可愛い姫には、悪女ぶるにはまだ早い》
ニヤリと笑ったのだろうか。
思わず、まじまじとその顔を見つめたけれど。
《失礼を。これは、私の希望も含まれております。もちろん姫は成長されましたが、ご存じなくとも私はずっと貴女を見守っておりましたからね》
子供扱いされたのだろうか。
ただの狐ではないことは分かっていても、ちょっとむっとしてしまう。



