明日、雪うさぎが泣いたら


なんて、意地の悪い質問だろう。
二人が想い合っていて、それでも幼馴染みから抜け出せずにいることは誰だって知っているのに。


『兄様が仰っているなかで、どれかひとつでも兄様が本当に望んでいることはあるのか。今でも全然分かりません。でも、これだけは言える』


長閑を下がらせ、それでも割り込もうとする彼女を広げた腕で押し止めた。


『私を閉じ込めたいのなら、そうすればいいじゃないですか。いたずらに二人を傷つけずとも、兄様にはそれができるでしょう? 別に、妻にするまでもない。ただ、おかしな妹を適当な理由で囲っていればいい』


声が裏返ったのは、あまりに腹が立ったからだ。
だから、泣く理由なんてない。
頬が熱いのは、怒りで熱が上がったから。


『求婚なんてする意味、どこにあるの。兄様の立場なら、そんな面倒なことよりもずっと簡単な方法があるのに。通ったり、邸を持って迎え入れたり。それよりも楽でしょう? ここでも、お望みなら、あの裏庭みたいな暗いところに閉じ込めておけばいいんだわ』


《雪兎の君、落ち着いて》


ああ、雪狐の声は本当に頭の中に流れ込んでいたのだ。
生憎、今はいっぱいいっぱいで、雪狐の言葉が入る余裕はないけれども。


『……だとしても、大人しく閉じ込められたままでいるとは限りませんけどね……!! 』