明日、雪うさぎが泣いたら


およそ、現実とは思えないやり取りに目眩がする。
今、一体何の話をしているの?
男二人は了承し合っているらしいが、当の本人の頭が全く追いついていない。


『……っ。恭一郎様! それは、あんまりではございませんか!? 一彰が姫に手を出すなど、あり得ないことですのに』


見かねた長閑が声を張り上げてくれる。
きっと、すごく勇気が要ったのだと思う。
親友だからと、普段はまるで礼を取らない一彰とは違って、彼女は兄様に対しては少し下がって接していた。
そんなこと、兄様だって知っているのに。


『なぜ、そう言い切れる? 』


意見することなどほぼない長閑には、身の竦む思いだろう。
私だって、この状況では兄様を怖いとすら感じる。
けれど、その一言で不安や恐ろしさは瞬時に怒りへと変わってしまった。


『答えなくていいわ』