明日、雪うさぎが泣いたら


「俺に“会いたい”なんぞと使いを出すとは、どういう嫌がらせだ。それほど恨まれることをした覚えはないぞ」


ふるふると文を握り潰しながらも律儀に私の部屋まで来てくれるあたり、根はいい奴なのだ。


「何で、恨むほどの相手を呼び出すのよ。ちょっと、付き合ってほしくて」


ふざけたことを言いながらも、大方予想していたのだろう。
これ見よがしに溜め息を吐き、ぽいっとその文を投げ捨てた。


「ああ、そうだな。もう兄様は付き合ってくれないだろうから。夢の君との逢瀬に、俺が必要か」

「少し違うわ。念のため、見張っておいてほしいの。夢のことは気になるけど、まだ行かないと決めたのよ。あ、もちろん、巻き込まれる前に手を引いてくれて構わないから」


あの光は、あまりに心地よかった。
また同じことが起きれば、今度は抵抗する気でいるけれど、少し不安だ。
少なくとも今は、まだその時じゃない。
そこは想定していなかったのか目を丸めた一彰は、すぐに不機嫌そうにもう一度息を吐く。


「……何もなかったことにして、恭のものになることはできないのか」