明日、雪うさぎが泣いたら

「大雪には勿体ないお話だったと思うんですけど……どの方もあまり好きになれなくて」


大半は兄様に頼まれた友人や同僚、そのまた友達。
明らかに面倒そうな人もいたし、狐か狸だかに化かされたとは一体どんな女だろうと面白半分の人もいた。
けれども、確かにごく僅か、優しくて私を変人扱いしない男性もいたのはいたのだ。
嬉しいと思いながら、それでも先へ進むことはできなかった。


「一目で恋に落ちるだなんて、そうそうないことですよ。もう少し、待ってみてもよかったのではないかしら? 」

「それは……あまり先延ばしにしても、お相手に悪いかなって……」


そんないい人だからこそ、長引かせても申し訳ない。
そういう殿方なら、他にいい人がすぐに見つかる。
その気のない私に時間を遣うより、ずっと有意義に――。


「それなら、今、恭一郎殿相手に迷っているのはなぜ?」


目を逸らしたのに、それこそが答えだと母は満足そうだ。
これまでなかったくらい、迷っている。
もちろん、私だって分かっているけれど。
問題は、それが兄様だから迷っているのか、それとも兄様が兄であるから迷っているのか。
同じようで全く異なる理由のうち、どちらなのか。
その判断がつかずにいるのだった。