「それに、もし、奇異の目を向けられたって」


手をぎゅっと握られ、少し気分が上向く。
長閑がいてくれてよかった。
私だって、もしそんな時がきたら、彼女のことを全力で応援するんだ――。


「反対しませんし、させませんよ」


親友との絆に感動していたところ、思いもよらぬ声に二人して飛び上がる。


「……っ、か、母様……!! 」


振り向けば、尼僧がひとり。
潔く肩の線で揃えられた髪が、やれやれと少し大袈裟に左右へ揺れた。


「申し訳ございません、七緒様。お休みのところ、騒いでしまって」


慌てて伏そうとする長閑を制し、自分も膝をついた。


「長閑が謝ることはありません。それに、内容は分かっています」


言われて目が丸くなったけれど、すぐに納得した。
少々曲がった考え方をするものの、筋を通したがる兄様かこの人に言わずにあんなことをするはずがない。