この世はどうして、淡く儚いものを美しくしたがるのだろう。
そんなのは大嫌いだと歯をぐっと食い縛るのに、見上げた先で舞う雪は、やはりとても綺麗だった。


「誰も何も、できることなどないのだ。お前が悔しがることはない」


(違う、そんなことない)


大声で否定したいのに、まるで駄々っ子のように嫌々をするばかりで。


「私は、そこがどこであろうとお前に逢えてよかった。もしも、そのせいで命を削られることになったとしても、私は同じ道を何度だって選ぶ。……だから、気に病まないでくれ」


悲しいに決まっている。
側にいられないのを、どうして悲しまずにいられるだろう。


「私は、命を引き換えにしないと逢えないような存在なのですか? 私がそんなたいそうな姫君のわけ、ないじゃないですか。私は我儘で甘えてばかりの、ただの……」

「永遠でなくてもいい。他と引き換えにしても、それでも少ししか側にいられないのだとしても、何に逆らうことになったとしても。今この時は離したくない。……私がそう思った姫だ」


それならば、いっそ逆らい続けたい。
罰当たりだと言うなら、他の何でも奪ってみせて。
この人を失う以上の罰などないのだ。
それを思えば、時空だって歪めてみせてやる。


「悪いのは私であって、お前ではない。私はお前の記憶が一部抜け落ちたままなことも、それを思い出すように夢を見るのも。それすら曖昧で、お前の中で時間の流れにズレがあることも……全部利用してきた。その報いでもあるだろうし、いい兄を演じた期間が長すぎたせいもある。けして、お前のせいではない」


それなのに、そうやって繰り返し私の咎を引き取ろうとする。
どうせなら、一緒に悪者にならせてくれてもいいのに。