明日、雪うさぎが泣いたら


邸の者総出で、いくら探しても見つからず。
やっと見つけたと思ったら、すっかり記憶をなくしていた。
それも、何度も探したはずのあの裏庭に横たわっていたのだ。
兄様はじめ、皆があの場所には良くないものが棲んでいると噂するのも、仕方のないことかもしれない。


「……ごめんなさい。心配掛けているのに。でも」

「でも、このまま放っておけば、一人で飛び出していくつもりだろう?それこそ、監禁でもしておかない限り、止めるのは難しいのだろうな」


寒空を見上げ、兄様が白い息を吐く。
それを見てやっと気がついたように、突然早口で言った。


「お前一人で行かせれば、今度は二度と帰って来ないかもしれない。お前が起きてこないと聞いて、もしかしたらもう部屋にはいないのではないかと、毎回ひやひやするのも私の身がもたないしな。……まったく、他にいい男がお前を見張ってくれたら楽なのだが」

「……一彰だけはあり得ませんし、今のところ、他に大雪に付き合ってくれる方は現れてませんけど」


むすっとした私に苦笑して、兄様が一歩前に出る。
自意識過剰でなければ、風避けになってくれたのだろうか。
もう部屋に戻れと言ったって、聞きはしないのを承知で。