明日、雪うさぎが泣いたら


「え」


でも、今日は違っていた。
兄様が悪いのでもないのに、申し訳なさそうな表情を浮かべるのも。
ほとほと困り果てたという、その声音も。
どちらも経験があるけれど、兄様がそう言ってくれたのは初めてだ。


「恭。お前に何の責任がある?付き合ってやる道理はないぞ」


一彰が至極もっともなことを言い、苦々しいとばかりに口元を歪めた。


「仕方ないだろう。確かに、私は小雪の気持ちを分かってやれない。男に生まれてしまったし、はっきり言って下衆な部類の考えに近いのだ。可愛いものも大事なものも、囲って一歩も外に出してやりたくないという、な」


潔く言いきられてしまうと、もう何も言えない。
この世界で一般的な考えが正しいとは限らないのだと、理解してくれているのは嬉しいことだ。


「恭一郎様。小雪には悪いけれど、私も反対です。良くないことが起こる前触れやもしれません。だから、こうも夢に見てしまうのかも。小雪自らわざわざ出向くなど、何の利点もないかと」


長閑まで。
遠慮して控えていたものの、我慢できなくなったらしい。皆、本当に心配性だ。
でも、私は確かめたいの。
ううん、それだけではなく、願わくば会いたいのだ。
妖怪でも人の子でも、他の何者だったとしても。
あの、夢の男の子に。