明日、雪うさぎが泣いたら


「ま、恭の言うことも当たってる。さぼりや妻の浮気防止にもよくある話だ。じゃじゃ馬姫を閉じ込めておく理由にもなるか」


黙り込んでしまった兄妹を見て、一彰が言った。
どちらの助け船のつもりだろうかとふと思ったけれど、奴は相変わらず無表情だ。


「いいわよ。大雪でも、じゃじゃ馬でも。でも、それっておかしいわ。どうして、こうも女は不自由なの。だから、もっと違う世界を見てみたくなるんだわ」


きっと、どこかにもっと自由な国があるはず。
もっと身軽で、もっといろんな選択肢があって。
そう、もっと、きっと、どこか――。


「……小雪」


(あ……)


まただ。
この話題になると、兄様は辛そうに目を落としてしまう。
それはさっきみたいに睨まれるより、余程堪えると知っているのに。


「お前は、そんなに私とかくれんぼがしたいのか」